私たちの目指す「こころをつなぐ小児医療」

福岡大学医学部小児科の第三代主任教授の満留昭久先生が、退職された後も福岡大学医学部小児科の季刊のニューズレターである医局便りに「こころをつなぐ」という題でコラムを連載されていました。その連載を一冊の本にまとめられたのが「こころをつなぐ小児医療」です。

この本は医学生や若い小児科医を主な対象として書かれたものです。
子どもの医療で迷いがでてきたとき、いつも子どもたちとその家族がその原点であることを確認し、彼らのために何ができるのかと考える、そのような医師の集団がわれわれ福岡大学医学部小児科であるという意識が伝統的に私たちの根底に流れています。
私たちの目指す、診療の姿勢、研究マインド、教育、子育てについてを「こころをつなぐ小児医療」から一部抜粋しお示しします。

「医師は医療の主役ではありません。医師は医療の現場では脇役であり、患者さんのサポーターであることを忘れてはいけません。そして自分の医療の実力に対して謙虚さをわすれてはなりません。あなたが「良い小児科医」と言われる日が近い、と信じています。」

「小児科医は病気を診て治療するだけでなく、同時に子どもたちの発育・発達を見守り、これを支援していく援助者であるべきなのは異論のないことと思われます。」

「私たちは、小児科学、小児医療の原点に立ち戻って、小児科学の専門性は専門性のみで成り立つのではなく、全般的な小児科学の基礎の上に成り立っているのだ、ということを認識すべきだと思っています。」

「砂利道にころがっている石の中に、キラリと光る小さな石ころを見つけることも立派な臨床現場での研究であり、自分でみつけ、育てた石は他の人にも論文として読んでもらい、その評価を受けることはさらに大きな喜びになります。」

「私たちが学生に「学士力」の向上を期待していくのは当然ですが、その前に私たちの「教育力」を高めるために努力するべきだと痛感しています。学生の意識を変え、行動を変えるためには私たち教員の情熱が必要なのです。」

「私たち大人は、からだの症状の奥にある子どもたちの本当のこころの叫び、SOSを受け止める受容器(レセプター)は、みな等しく持っているはずです。それを聴き止めることができるかどうかは、子どもたちが発信しているこころの叫びを聴きとめようとする姿勢があるかどうか、レセプターのアンテナを子どもたちのこころに向けるかどうか、にかかっているのです。」